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恋より友情だよね、っていうフレユリ書きたかったはずなのに…

よくわからない、だらだら駄文になりました。
セリフでしか話進められません。

***

昔、ユーリが恋をした。
初恋をしたのだ、と楽しげに笑うハンクスさんが告げた。

それはまるで死刑宣告のように、僕に重くのしかかった。

頭がぼうっとして何も考えられなくなった。
視界もぼんやりとして、かすかにハンクスさんと思われる、老人にしては若い、張りのある声がした。

その頃から、僕達は唯一無二の親友だったのだ。

ユーリのことが大好きだったし、その気持ちは誰にも負けないと思っていた。
…時々、ケンカもしたけれど、それは今と変わらない。

この《好き》は、勿論恋なんかではなくて、友情で親愛だ。

あの頃の僕達はまだこどもで、恋だとか愛だとか、そんなのは結界の外と同じくらいに未知だった。

だからただ単純に、ユーリに、自分より大切な存在ができたかもしれない、という事象がどうしようもなく嫌だったのだろう。
小さな僕の胸は、嫌悪と厭世と悲愴でいっぱいになっていた。

ぽろぽろと、知らぬうちに流れた涙にハンクスさんは慌てて、どうしたのか、と優しく、あやすように聞いた。
僕はしゃくりあげながら、子供じみた独占欲を吐露したのだ。

「だって、ユーリに僕より好きな人できちゃった…。
僕は誰よりユーリが好きなのに…、ユーリの一番でいられなくなっちゃう…っ
…ユーリが女の子だったらよかったのに…!
そしたら、その人に恋なんか、しないで、僕と、結婚できたのに…っ」
「フレン…」

そうすると、ハンクスさんは呆れるでも笑うでもなく、こう言ったのだ。

「いいか?フレン。
恋ってのはな、これから何回もしていくんだ。
お互いに好きだったはずなのに、心がすぐに離れたりする。
あっという間に素知らぬ他人に逆戻りだ。」
「でも、ハンクスさんと…おばあさんは…?」
 
ふと、数年前に亡くなったおばあさんと、ハンクスさんの仲睦まじげな姿を思い浮かべる。
穏やかに微笑みあう二人は、まるで世界を切り取って、二人だけの空間を作り出していたようだった。
 
すると、ハンクスさんは「こほんっ」と、照れ隠しにひとつ、咳払いをした。
それから、ひどく穏やかな顔をして、呟く。
 
「…まぁ、そうならないものもあるが…なかなか見つからないんじゃよ。」
「…ふーん?」
「でもな、フレン。友情は別じゃ。
お前たちは、どんなにケンカしたって、『ごめん』で仲直りしとるじゃろ?
『ごめん』が言えるうちは、お前たちはずっとずっと友達でいられる。」
「ずっと…」
「ユーリの恋が上手くいって、いっしょに喜んであげられるのも、
上手くいかなくて、いっしょに悲しんであげられるのも、他の誰でもない。フレン、親友のお前だけなんじゃよ。」
「うん…」

頷いた僕は、それでもやっぱりユーリの恋が上手くいくなんて嫌だった。
ちゃんと喜んであげられるかな、と想像してみたけれど、胸がもやもやするだけだった。
 
「フレンがもし、同じように恋をしたときもユーリもきっとそうしてくれる。」
 
と言われて、僕はユーリ以外好きになったりしないのにな、と思いながらも、
確かにユーリなら自分のことのように喜んだり、悲しんだりしてくれるんだろうなとも思った。
それがちょっと、哀しくて、痛かった。
 
それは些細な差異だったけれど、決定的な差異でもあった。
 
 
そういえば、ユーリの初恋は、初恋に相応しく綺麗な思い出として風化していった、らしい。
要するに、想いを伝えることなく終わったのだ。
それもハンクスさんが情報源だけど。
 
 
結局、ユーリは僕には何も話してくれなかった。
僕としては、ユーリの好きになった人がどんな人だったのか少し気になったけれど、
ユーリの一番に戻れたという事が嬉しくて、どうでも良くなった。
 
今となっては、本当にあのユーリがそんな甘ったるい感情を誰かに抱いてたなんて眉唾だ。
甘ったるい、だなんて知ったかぶりをしてみたが、結界の外を知った今でも僕にとって恋なる感情は、未だ未知なる物だったりする。
 
もしかしたら、一生そんな感情抱くことはないのかもしれない、とも最近では思い始めている。
まあ、それでもいいか、と思うのはやはり不動の一番が僕にはいるからなのだろう。
下町にいたあの頃と違って、ユーリが騎士団に身を置いていたあの頃とも違って、毎日顔を合わせられるわけではないけれど。
 
コンコン…
 
たまにそうやって僕の部屋の窓を叩いて、懐かない猫のように彼がやってくる。
「行儀が悪いからやめろ」とは、口では言いつつも、僕はその音を心待ちにしていたりする。
 
だって、ユーリが僕に会いにやってきてくれるのだ。
僕に会うためだけに。
 
そう思うと、散々働いて、持ち帰った書類の束を前にしても、顔が綻んでしまう。
 
今日も、あの窓から聞こえてくる音を思いながら、机につく。
 
 
あぁ、やっぱり僕はまだ、親友さえいてくれればいい。
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