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某小説がすきすぎて
義父デュークと、養女ユーリ。(要するににょた化)
でもこの設定だけならありがちですよね…

文章力が天と地ほど違うので、オマージュだなんて口が裂けても言えません。
(念のため、二次創作作品のではないです。)

嫁入り前夜のちょっとえろっぽい感じ。
きっと結婚相手はフレン。

初デュクユリがこんなんでいいのか…(笑)




「嫁に行くのだな、お前は…」

荷造りをしていると、義父のデュークが、独り言のように小さく呟いた。
感慨に耽っているわけではない。
普段からこうなのだ。
この、デュークという男は。

10年近く、この男と二人きりで暮らしてきたが、何を考え、何を思い、何に関心を持っているのか、結局、皆目見当がつかなかった。
何より知りたかった…否、本当は知りたくなかったのかもしれない、このオレに対する想いさえも、垣間むことができなかった。

「行くよ。婚姻届、出しに行ったろ、この前。」
「そうだったか…」
「そうだった」


オレは結婚する。
この家を、出るのだ。

家を出ること自体には、大した感慨はない。
根なし草のようふらふらと、この短い年月で何度も住所を変えてきた。
数えたことはないが、たぶん、片手では足りない。

結婚せずとも、そう遠くない未来に、この家とはお別れしていただろう。

「昔は、私のお嫁さんになるなどと、言っていたものだがな…」
「…それは、アンタが…――」

言い掛けて、口をつぐむ。

大して多くもない荷物をまた一つ、大きなトランクに詰めた。
持っていくものは、なるべく少ない方がいい。
新しい生活に、過去はいらない。

「私が?」
「……最低だって、気付けないほどガキだったから…」
「最低、か」

そう反芻するデュークの顔は、やっぱり淡白で、いつも通りだ。
もしかして、傷ついたのかも知れないが、オレにはその表情から、感情を読み取る術はなかった。

昔は、それを身につけたくてしょうがなかった。
今は、もう諦めているのだが。

「最低だろ。」

こんな話をしていると、その最低な彼との過去を思い出してしまいそうで、会話を打ち切るように、立ち上がる。

そのまま無言で、寝室に向かい、布団を見て思いつく。

「あ、そうだ。残ってるオレのもん、捨てといていいから」
「…捨てなくてもいいのか」
「……いいけど、もうオレ戻らないぜ?」

その為の、結婚だ。
コイツと、離れる為の。

「そうか…」

こんな時だけ、寂しそうにみえる横顔は気のせいだ。
だって、デュークは包丁で指を切ったって、足の小指をぶつけたって、扉に指を挟んだって、眉ひとつ動かさないのだ。
(彼は意外と、抜けてる。)

「…ユーリ」

低く囁く声が、オレを呼んだ。
同時に、病的に白い腕に抱え込まれる。

「デュ、ーク…」

久しい胸板に、胸の奥が苦しくなる。

以前は、毎日のようにこの胸に抱かれていた。
だから、身体が勝手に反応してしまう。
刷り込まれた、あの行為を、期待してしまう。

「こういうのが…、」

デュークとは似ても似付かない漆黒の瞳に、涙が溜まっていくのを感じる。

そうだ、妙に熱いのは涙のせい。

「最低なんだ…――っ」

コイツに愛しさなんて、感じるはずがない。

だって、愛なんか、オレは知らない。




それでも、この男の娘になって以来、繰り返され続けた行為を、阻む手立てなんて、オレは持ち合わせていなかった。

流されるように、明日にはもう使い手のない布団に雪崩る。

そのまま、薄い唇が重なった。
閉じた唇を、ノックするように、何度も何度もついばまれ、開いた隙に、舌が絡めとられる。
背筋がぞわぞわとして、皮膚が粟立った。

昔は、このキスも、この先の行為も大好きだった。
何にも関心がなさそうな、浮世離れしたこの養父に、少しでも近付ける気がして。
少しでも心に触れられる気がして。

「ん、でゅ、ぅくぅ…」

縋りつくような、自分の声が厭になる。

甘い声をあげるのは、いつだってオレだけ。
どんな時だってデュークは、ただ義務のようにオレを抱くのだ。

そのルーチンワークのような、仕草が、堪らなく苦しくて、痛かった。
愛を語るわけでもなく、欲を曝け出すわけでもなく、淡々とこなされる目合。

一度くらい、「愛してる」とか言って欲しかった。

「ユーリ…?」

端正な顔が、視界に広がる。

デュークの、白いうねった髪が、顔に垂れてきた。
擽ったくて、身体を捩らせる。

額に唇を落とされて、合図だ、と悟る。

「なぁ…、こうやってアンタとひとつになれるのも、最後かな…」

今まさに、入り込もうとしているデュークを、入り口で感じる。

熱い…。

どんな猛暑でも涼しげで、普段、体温なんて感じさせない彼の、唯一、温度を感じる場所。

「ん…っ」

初めて、受け入れたときはただ痛くて、壊れる、と思った。
もう二度とするもんか、と。

それでも、この痛みが快感になる程数を重ねたのは、朴念仁なこの男が、自分を求めてくるのが嬉しくて堪らなかったから。

「…最低だったけど…」

その感覚を、手にした時には、歪な親子像に、感付き始めていたのだけれど。

「ありがとう、“お父さん”」

聞こえない程、小さく呟く。

熱が奥を穿った。

「…んぅ、ぁ…ッ」

とっくに知り尽くされた身体は、すぐに中でどろりとした熱が溢れだす。
まるで、デュークの熱が、自分を溶かしているのではないかと思う。

「ユーリ…、」

切なそうに呼ばれる名は、やっぱり気のせいだ。

血のように、赤い瞳に映ったものが、オレには解らない。

「あぁ…――ッ!」

熱が放たれ、デュークという男が、広がっていく。
眼前が男と同じ、白に染まった。

ぼやける視界で、デュークを捉えると、ゆっくりと開かれた唇から、音が零れ落ちた。

刹那、耳を疑う。

そんな言葉は、今まで一度だって言ってくれたことなかったくせに。

あれ程聞きたかった言葉を…
あれ程聞きたくなかった言葉を…

いま、さら…――


「愛してる」

「……っ」


あぁ、やっぱりコイツは最低だ…。
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