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実家の行きと帰りの新幹線の中での暇でぽちぽちと…
ユーリのこと考えてないと死んじゃうんです…私…。

ED後。
ちっともレイユリになってない駄文。
おっさんの心臓魔導器ってどうなのよって思って…

ネタバレ・捏造全開です。

タルカロンの闘いから数ヶ月。

テルカ・リュミレースから魔導器が消え、人々は、はじめは戸惑いつつも、ヨーデルとエステリーゼ、そしてフレン率いる新生騎士団の下、どうにか形を成してきていた。
魔導器が発掘される前は、そうやって生活してきたのだ。
難しくともできないことはないはずだ。

それでも一番の問題は、やはり結界魔導器を失ったことによる魔物対策であった。
そこで以前より増したのが、ギルドへの依頼である。
弱小ギルドだった「凛々の明星」にも、そのような依頼が多く寄せられていた。

しかし、ギルドだって勿論、同じく魔導器を失っている身の上だ。
魔導器ありと生身では、雲泥の差…とまではいかなくとも、これまでとは比べものにならないくらいの苦戦を強いられる。

そんなわけで、怪我の数も依頼の数と比例していた。


「青年、ちょっと右腕見せて。」
「……」

依頼を終えて、現在の根城、ダングレストの宿屋に戻ってきたユーリに開口一番そう告げた。
利き腕ではないので見逃しそうだったが、よく見れば、応急処置にと巻かれただろう包帯からは、血が滲んでいるのがわかる。
それでなくとも、彼は強がるくせを持っているので、負傷を見抜くのはなかなかに難なのだが。

「…大丈夫だよ、こんくらい。」
「大丈夫なら見せなさい。お前さん、すぐ嘘つくんだから!」

素通りしようとするユーリの右腕を掴む。
一瞬歪む横顔。
掴んだのは、傷口から離れた場所だったので、もしかしたら思った以上に重傷なのかもしれない。

「ほーら、痛いんでしょ!」
「少しな。」

勝ち誇った顔で言ってやると、ユーリはなんでもない風に返す。
“少し”なわけ全然ないのだが、痛みを認めただけ良しとする。
相変わらずな態度に溜め息を吐きつつも、治癒術を施そうと手を傷口に掲げようとすると…―――

パシッ。

その手を捕らえられた。

「そりゃ反則だろ、おっさん。」
「…え」

一瞬、何を言われたのか理解できずに呆然となる。

「みんな魔導器使えねぇで困ってんだ。おっさんだけが使うのはなしだろ?」
「あ…、………あぁ、そういうコト。」

ユーリは不真面目にみえて、意外とこういうところは厳格だ。

まぁ、確かにそうなのだが。
その通りなのだが。
ただ、それを咎めるのは前提が間違っている。

「…っていうか、そもそもおっさんだけ魔導器つけてるのは不公平じゃないの?」
「だって、それなきゃおっさん死ぬだろ?」

何を当たり前のことを、という顔で即答する。
今まで、数えきれない命を奪った彼が。

「うん、そうね。だっておっさん死んでるもん。」

とうに尽きたはずの命を守ろうとする。

「死んでる人間生かす為に使うのは不公平じゃないの?」
「………そんなの、」

直情型のユーリは、論理が不得手だ。
きっと感覚だけで、自分を生かしてくれているのだろう。
あの人のように、利用だとか価値がどうのとか難しいことは考えていないに違いない。
…まぁ、それが嬉しかったりするのだが。

「…いんだよ。おっさんのはおっさんの生命力で動いてんだろ?てめぇでてめぇ生かす分には問題ないだろ。」
「……はは、」

そういえば、天才魔導少女もそんなこと言ってたけ、と苦笑する。
それをみて、ユーリは怪訝そうに顔を歪めた。

「今、笑うとこか?」
「いやー、みんな優しいなって思ってさ。」

使い捨ての命をこんなに大事にしてくれて。

「そうか?普通だろ、仲間なんだから。」
「…!」

だから、
それが『優しい』と言うのに…。

胸が熱くなる。

「ユーリくん…」
「ん?」
「おっさんもユーリくん大好きよぉ!」
「はぁっ!!?」

思いっきり抱きついたら、思いっきり蹴られた。

「何、勝手に空耳してんだよ。んなこと、一言も言ってねぇし、これからも口にすることもありえねぇっての。」
「んも~、照れ屋さん☆」
「照れるか!」

なおもまとわりつくと、振り払おうとする彼の腕を掴み取る。
痛む右腕を。

「――……っ」
「とりあえず、治療させて?」
「…っ、だから…!」
「わかってるって。」

食い付くユーリの目前に手を掲げて、制止を促す。

「術技は使わない。それでも、これよりは多少マシな治療ができると思うけど?」

嬢ちゃんほどではないけどね、と付け足して。
長い事、騎士団にいたのだ。処置はそれなりに心得ている。
…シュヴァーンが。

「じゃ…、頼むわ。」
「了解よ!」

傍のソファーに腰を掛けさせ、跪く。

ユーリの雪のように白い肌を覆う、無機質な白の包帯を取りはずしてゆく。
露になる粒子の細かい美しい肌に、異物のように深く抉られた赤が痛々しく、思わず顔をしかめてしまう。
跡が残ってしまいそうな傷に、術を使えば、一瞬で取りのぞいてあげられるのに、と歯痒さを覚えた。
それでも最善を尽くそうと、頭を切り替え、黙々と治療に専念する。

そうして静寂に包まれた空間に、不意に声が響いた。

「おっさんもさ…」
「ん?」
「……リタにみてもらえよ。」

吸い込まれそうな黒が射ぬく。

「勝手にくたばるなんて、許さねぇからな。」

そう言った彼の眼差しは、ひどく真剣で…
いつものように茶化したり、軽く流すことが憚られた。

だから、

「…わかってる。」

たった一言だけそう告げた。

だって、とっくに誓っていたから。
“シュヴァーン”が死んだあの時から、
この命は、凛々の明星と…――否、彼と共にあるのだと。

「おっさん?」
「んー?」
「………。」

ユーリは、己の右腕と治療する人物を交互に見やると、

「…何でもねぇ。」

と微笑した。

「そ。」

軽い返答をして、ユーリの腕を諸手で包む。
とっくに治療を終えた彼の腕を。

そうして暫く、手のひらで彼の脈動を感じていた。

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